ポストロックの代名詞とも言えるバトルス(Battles)。シカゴ音響系のバンドとしてプログレッシブ・ロックやテクノなどを通過しながらも、ワールド・ミュージックの要素が強い実験的なバンドです。さまざまなジャンルを消化した音楽性は評判も高く、世界各国のメディア、ミュージシャンから評価され続けています。マスロックの巨匠である元ドン・キャバレロのイアン・ウィリアムスを中心として、2002年に結成されたバンドです。
ワールド・ミュージック的なポストロック
日本の中でポストロックの知名度と言えば、toeやmouse on the keysのようにドラムが細かくて複雑なリズムのバンドというイメージが強いかと思いますが、バトルスはどちらかと言えば緩やかなビート感が特徴です。これはワールド・ミュージックの影響を受けていることが関係しています。
特に、バトルスの最新作「ドロスグロップ」は「グロス・ドロップ」をリミックスした作品であり、リズム構築の面で重点を置いています。「ice cream」のリミックスを行っているのはギャング・ギャング・ダンス。奇妙な雰囲気を出した楽曲に仕上がっています。
タイヨンダイ・ブラクストン脱退後も変わらないスタンス
フリージャズ界の大御所を父に持つタイヨンダイが脱退後も、バトルスの活動は続いていきます。「グロス・ドロップ」のリミックス版として登場した「ドロスグロップ」は、元々の作品タイトルをもじった内容。しかし、リミキサーの豊かなセンスを感じさせるクオリティとなっており、「これはもはや新作だ」と謳われるほどとなっています。
本作がリミックスアルバムとして他と差別化を図っているポイントは、収録されている楽曲が違うという点にあるのではないでしょうか。収録順や楽曲の内容はまったく新たな形で構築されているあたり、バトルスならではの美学やこだわりを感じさせます。アンビエントな「Wall Street」にも要注目です。サイケデリックな浮遊感漂うウワモノのサウンドにも注目すべきところでしょう。また、「Africastle」はシューゲイザー的なイントロから始まり、ダンストラックに移行するナンバー。リミックスはkode9 Remixが担当しています。
バトルス「ドロスグロップ」は彼らの進化を反映した作品。過去のポストロック的あるいはそのバックグラウンドとなるハードコア的な雰囲気から脱却し、現在のキャッチーかつドリーミィな世界観へと変遷を遂げています。しかし、その中に隠された構築されたビート感には注目すべきでしょう。